(c) ポニーキャニオン
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●INTRODUCTION
血のつながらない姉弟、マキ(石堂夏央)と慎二(伊崎充則)はケチな盗みをして暮らしている。慎二は密かにマキに恋心を抱いていた。二人はあるとき、犯罪組織の暗殺現場で負傷した殺し屋・火野(堤真一)を助ける。彼を介抱しながらの奇妙な共同生活が始まった。
やがてマキは火野に惹かれていき、慎二は火野の雇い主・佐藤(高田純次)の導きで殺し屋の世界に足を踏み入れていく。しかし、マキには隠された過去があり、心の傷により男に対して異常な行動をとることがあった。関係をもった火野に対してさえ、それは変らなかった。 一方、佐藤は組織のボスの大和(佐藤允)から切り捨てられて逆襲、大和を自殺に追い込み、チャイニーズ・マフィアとの取り引きの実権を手中に収めていた。火野とともに、佐藤たちの取り引きに関わっていく慎二。だが、覚醒剤による幻覚から、佐藤はマフィアに対する不信感を募らせていく。 ある事件をきっかけに慎二は姉への感情を自覚し、姉弟の関係も微妙なもつれを抱えていた。次第に三人の気持が交錯し、彼らはときに凶暴性をむき出しにして、破滅に向かって暴走し始めるのだった…。
自主映画界で活躍していた野火明監督の代表作『ダイヤモンドの月』(92年度ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭
オフシアター・コンペ部門グランプリ)を観た香港映画界の重鎮、ツイ・ハ−ク(『恋する天使』『北京オペラブルース』)はその才能に惚れ込んで、全面的なバックアップを約束した。 そして、2年間に渡り香港、東京で、ツイ・ハークと野火明監督はディスカッションを重ね、一つのストーリーを練り上げていった。その原案を基に斉藤ひろし(『ロッカーズ』『黄泉がえり』)が脚本化し、撮影=上野彰吾(『ハッシュ!』)、美術=斉藤岩男(『連弾』)らベストスタッフの参加によって製作されたのが本作である。都市生活者の孤絶感やその中に潜在する狂気を切りとる感覚が光り、全編に静謐さを湛えた美しさがあふれる。シドニーフィルムフェスティバルほか各国の国際映画祭でも好評を博した。
慎二役に『八月の狂詩曲』の伊崎充則、マキ役に『オートバイ少女』の石堂夏央、ヒットマン火野役に『ポストマン・ブルース』『MONDAY』の堤真一、組織の幹部役を高田純次が怪演している。
★96年度ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭・批評家賞
(南俊子賞)
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